同研究班は、03年8月〜04年12月、全国3カ所の救命救急センターに搬送された計721人(未遂者641人、自殺者80人)を対象に、遺族や未遂者本人から聞き取り調査した。事前に誰かに死にたい気持ちを相談していたか否かが判明したのは675人(未遂者615人、自殺者60人)。「相談した」は未遂者で244人(39.7%)、自殺者は18人(30.0%)しかなかった。
相談相手は家族や友人が多く、精神科医へは未遂者が30人、自殺者は5人。それ以外の医師へはほとんどなかった。
主任研究者の保坂教授(精神医学)は「自殺者の多くはうつ病と思われる。決して本人が悪いわけでも、弱いわけでもない。すべての医師が、うつ病の知識を深め、兆候のある患者を診療した場合、本来の治療だけでなく問診したり助言することが重要だ」と話す。
警察庁の調べでは、04年中の自殺者数は3万2325人で、98年から7年連続で年間3万人を超える。行方不明で遺体が見つからなかったり、はっきり自殺と分からないケースは計上されておらず、実際はもっと多いと言われる。参院厚生労働委は7月、政府に総合的な自殺対策を求める決議を行い、尾辻秀久厚労相は積極的に取り組む姿勢を示した。【玉木達也】
◇「予防」遅れる自治体
WHO(世界保健機関)によると、日本の10万人あたりの自殺者数は24.1人(00年)で東欧諸国などに次ぎ10番目。先進国では突出している。
厚生労働省は00年に「健康日本21」を策定し、10年目には自殺者数を2万2000人以下とする目標を設定、都道府県や市町村も地方計画を立てた。しかし、総務省によると、02年度に自殺予防事業を実施した都道府県・政令市は新潟、石川県など8県市だけ。
一方、新潟県松之山町(現在の十日町市)では約20年前から65歳以上の全町民にアンケートでうつのスクーニングを行ってきた。うつやその可能性の高い人に専門治療や面接による病状観察を行い、自殺率が改善している。青森県名川町は自殺未遂者に注目し、プライバシーに配慮しながら精神科の受診を勧めたり、家族支援をしている。
自殺率ワースト1位が長年続いていた秋田県で自殺防止に取り組んできた本橋豊・秋田大医学部教授(公衆衛生学)は「どうすればうつ病の人を医療機関へつなげることができるかは重要な課題の一つだが、総合的な対策が必要。職場や地域、家庭で問題意識を持てるようなキャンペーンを行い、国と自治体が役割分担して取り組めば、自殺率は確実に下がるだろう」と指摘する。
(2005.8.29/毎日新聞)


